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2025年4月8日火曜日

【電気の話】直流(DC) と 交流(AC) の変換方法【その2】

前回の週刊サンデンでは電気の流れ「直流(DC) と 交流(AC) の違い」について説明しました。

電気には直流と交流があることはわかりましたが、私たちが普段使用している電子機器たちはどのように動いているのでしょうか?

実は、用途に合わせて ”直流と交流を変換” しながら電気を流して機器を動かしています。

そこで今回の記事では、直流(DC)と交流(AC)の変換方法について解説します。




 

直流と交流の変換

直流と交流は相互に変換することが可能です。

直流と交流の変換は、すべての電子機器と言っても過言ではないくらい、様々なシーンで使用されています。





交流 → 直流(コンバータ)

交流から直流への変換は、最も身近にある電気ではないでしょうか。

一般に電子機器は直流で動作しています。これは身の回りにあるスマートフォンやパソコン、テレビや冷蔵庫、エアコンといった家電製品から、自動車の車載機器や工場内部で稼働している製造ロボットまで共通しています。ただし、これらの電子機器はそれぞれ動作する電圧が異なります。それだけではなく、一つの電子機器の内部でも、回路によって必要な電圧が異なります。ですので、例えばコンセントの交流を直流に変換するだけではなく、必要な電圧に変換して回路に提供する必要があります。

その代表的な製品は「ACアダプター」があります。


交流から直流への変換

交流電源を直流電源に変換するには、トランスで電圧を変換し、その後整流回路で交流から直流へと変換します。ただし整流回路からの出力は正弦波の形になっていて電圧の変動がありますので、これを安定した直流電源に変換するため、さらに平滑回路を通す必要があります。

また、交流は電圧が時間とともに変化します。交流からそのまま直流に変換するだけだと、電圧の変動が回路の動作が不安定になりますので、安定した電圧への変換が不可欠です。

その方法は2つあります。一つはリニア電源で、もう一つはスイッチング電源です。

リニア電源

リニア電源は交流電源から余分な電圧を取りのぞきながら直流電源を作る方法です。いわゆるトランス方式とも呼ばれます。

この方法では商用電源から取り出した非安定な直流電圧を基準電圧と比較しながら、抵抗器を使って余分な電圧を除去して安定化させます。

抵抗器を使うだけですので安価かつ単純な作りで実現できる一方、余分な電圧は熱として放出されますので、回路での熱のコントロールが不可欠となります。また、熱に弱い回路のそばでは利用することができません。

メリット

  • 回路が簡単
  • ノイズが少ない

デメリット

  • 重い、大きい
  • 効率が悪い
  • 発熱が多い


スイッチング電源

スイッチング電源は、リニア電源の「構造は簡単だけど発熱量が大きい」という問題点を解消するために生み出されました。

この方法では抵抗器を使わず、商用電源から取り出した非安定な直流電圧を基準電圧と比較しながら、スイッチング回路、高周波トランス、整流回路、平滑回路などを使って、パルス幅を変化させて安定させていきます。抵抗器を使わない分、熱の発生は抑えられますが、ノイズの発生がありますので、このノイズを取りのぞく必要が出てきます。

スイッチング電源はリニア電源に対して低消費電力であるというのが大きな売りです。もともとはNASAの宇宙開発から生み出された電源です。宇宙空間で運用される人工衛星や宇宙船はエネルギーを無駄にできない上、熱の放出が困難な場所ですので、廃熱を伴わずにエネルギーを使い切るための電源として開発されました。

メリット

  • 軽い、小さい
  • 効率が良い
  • 発熱が小さい

デメリット

  • 回路が複雑
  • ノイズが多い




直流 → 交流(インバータ回路)

直流から交流への変換は、インバータ回路が設計します。

インバータとは、直流から交流へ変換する回路やこの回路を含んだデバイスのことです。太陽光発電やバッテリーの直流を交流の電気に変換する回路や、交流で駆動するモーターの制御回路をインバータと呼んでいます。ここでは「直流を交流の電気に変換する回路」について先に解説します。

代表的な製品は、太陽電池パネルでつくられた電気を変換する「パワーコンディショナー」があります。


直流から交流への変換

例えば、太陽電池パネルから作られる電気は直流です。そのため家庭や工場で使用できるように交流に変換する必要があります。そこでパワーコンディショナ(パワコン)と呼ばれるインバータを使用し、直流を交流に変換しています。

多くの場合、半導体のスイッチ(FETなど)を使用して直流の電圧を細切れにし、それをローパスフィルタを使って平滑化することで交流を作り出します。


インバータ回路の原理

インバータ回路は直流を交流に変換します。


回路に直流電源を接続して、負荷に対してスイッチ①と④がONの状態の時に②と③がOFF、①と④がOFFなら②と③がONと、対になるように一定周期で繰り返すと、負荷に流れる電流の方向が切り替わってプラスとマイナスの電圧で出力され、交流電流を作りだします。この技術が「スイッチング技術」です。

なお、スイッチング技術を用いた回路は、交流を直流に変換することもできます。電圧が正方向のときはスイッチ①と④を閉じ、電圧が負方向のときはスイッチ②とスイッチ③を閉じると、負荷に対しては常に同じ方向に電流が流れます。




交流 → 交流(インバータ装置)

先述のコンバータ回路とインバータ回路を用いた「インバータ装置」は、交流から交流へ変換します。

一般的に、コンセントから供給される交流は電圧と周波数が一定で、国によって統一されています。交流の電圧や周波数を任意の値に変更するには、交流(AC)の電気を一旦直流(DC)に変換し、再度交流(AC)に戻す必要があります。交流電源の内部に、この「インバータ装置」が使われています。

代表的な製品は、交流で駆動するモーターを制御する「エアコン」や「洗濯機」などです。


インバータ装置の技術

インバータ装置はモーターを制御できます。エアコンを例にしてみましょう。

インバータの搭載されていないエアコンは、冷えすぎると運転を休止し、暑くなると運転を再開させるしかありません。室内の温度が安定せず、電力消費が多くなるなど、とても効率が悪いものです。

一方で、インバータが搭載されたエアコンは、冷房を運転開始時に高速でモーターを回してファンを回転させ、設定温度に近づいたらファンを低速にして緩やかな変化を付けて運転を継続させます。結果、ONとOFFしかないエアコンよりもムダな動きが減らせて省エネでの運転が可能になります。

インバータ装置の恩恵を受けているのは、家電だけではありません。エレベータの揚げ降ろしや工場のコンベアーが急加速や急停止しないようになっているのは、モーターの加速がうまく調整されているためです。モーターの速度調整にはインバータ装置が役立っています。


インバータ装置の仕組み

インバータ装置は、コンセントからの交流電流を任意の周波数や電圧に変更する目的で多く使われます。

コンセントから供給される電圧と周波数は、東日本なら100V、50Hz、西日本なら100v、60Hzと決められており、モーターの回転数は周波数によって決まるため、コンセントとモーターを直接つなぐだけでは、回転数を連続的に変化させられないのです。

そこでインバータ装置を用いて周波数を変えることによってモーターの回転数を変化させます。交流電流を直流電流に変換する「コンバータ回路」と「コンデンサ」、そして「インバータ回路」の3つの要素で構成されています。

コンバータ回路で交流を直流に変換し、コンデンサに充電や放電を繰り返しながら安定した直流に整えます。次に、インバータ回路で直流を任意の周波数や電圧で交流に変えて出力にします。





直流 → 直流(DC/DCコンバータ)

DC/DCコンバータとは、直流を直流へ変換する装置です。直流の電圧を変え、電圧変換を行うために使用されます。DC/DCという名称から「デコデコ」ともよばれます。

代表的な製品は、スマートフォンなどを充電する「モバイルバッテリー」です。


DC/DCコンバータの用途

コンピュータの基板などに利用されているICなどの電子部品は、固有の動作DC電圧をもち、さらに不安定な電圧では誤作動を起こしてしまいます。そのような機器に直流電流を供給する際にDC/DCコンバータで電圧変換を行います。

DC/DCコンバータで、電圧を安定にする装置のことを電圧レギュレータといいます。電圧レギュレータにはいくつか種類がありますが、大きく分けて「リニア型」と「スイッチング型」があります。

直流電流は交流電流のような周波数や層などの差はありません。電圧と電流量(抵抗)だけで条件が決まります。直流電流には、IC、電子回路のような低い電圧のものから、電気自動車のモータを動かすような高い電圧のものまであります。

DC/DCコンバータの評価では、入力側の電圧を変動させたり、出力側の負荷を変更して電流を変動させたりするなど、実際の使用状況を模擬する必要があります。また特に自動車に使用するDC/DCコンバータなどの場合、環境負荷低減の観点から回生エネルギーを使用するものを多くあります。

例えば「モバイルバッテリー」は、交流電源をAC/DCコンバータでバッテリーに直流電源を溜めます。そのバッテリーからスマートフォンへDC/DCコンバータ装置で変圧した電圧を出力します。


リニアレギュレータ

リニアレギュレータ型のコンバータは、最もシンプルなDC/DCコンバータです。主に降圧を目的に使用されます。リニアレギュレータ(調整器)と呼ばれる、三本の端子を持つ電子部品を使うことがこのコンバータの特徴です。

メリット

  • 回路が簡単
  • ノイズが少ない

デメリット

  • 重い、大きい
  • 効率が悪い
  • 発熱が多い

この端子の一本は入力用、もう一本はGND(グランド)用、そして最後の一本が出力用で使われます。

入力端子から高い電圧が印加された時、レギュレータに抵抗やトランジスタなどの半導体を用いることで電圧降下させ、余分な電圧を熱に変える現象を利用して任意の直流電圧を獲得します。

シンプルゆえに量産が可能で低価格帯製品が多いですが、放熱するので大きな電流を出力させることはできず、せいぜいの環境は1Aほどとなります。また、不要な電力を捨ててしまうということは効率が良いとは言えません。

スイッチングレギュレータ

現在主流となっているDC/DCコンバータが、スイッチング型です。「交流→直流の変換」の解説にもあった通り、NASAが、もっと低消費電力で高い効率を期待できる電源を所望し、開発に至りました。

スイッチング型のDC/DCコンバータは、スイッチを高速でオンオフさせることで入力された直流電圧をパルス状に区切り、それらをならして平均化させるものです。

メリット

  • 軽い、小さい
  • 効率が良い
  • 発熱が小さい

デメリット

  • 回路が複雑
  • ノイズが多い

リニアレギュレータと比較すると効率が良く、また、放熱はないため大電流下での駆動が可能となります。

また、これまで昇圧はトランスを用いねばならず、機器にボリュームが出がちでしたが、スイッチング型コンバータによって昇降圧どちらも選べるようになりました。つまり、小型・軽量化に成功するようになりました。

ただ、回路構成がやや複雑でコストがかかる、ノイズが大きいなどの課題もあります。




電線へ求められること

電線を選定する際、簡単に次のようなACコードやDCコードを求めることになりますが、目的が送配電用、機器配線用、信号、制御用等いろいろな用途があるため、みなさまの ”電線をください” に対して我々電線を提供する側としてまずは、"電源用ですか?信号用ですか?" 等と伺います。

電源用であれば耐電圧や許容電流など必要条件を深堀していきます。


電線においては「定格電圧」が設計されている製品があります。「定格電圧」は絶縁破壊を起こすことなく連続使用できる最高使用電圧です。

一般的に「盤内機器接続用」と「盤間接続/機器間接続用」の電線では低圧区分AC600V・300V・100V未満の電線が使用されます。

また、高圧区分:DC750Vを超え7000V以下 / AC600Vを超え7000V以下、特別高圧区分:AC/DCともに7000Vを超える電圧が存在します。

電圧が高くなるほど危険性が増しますので、専門的内容であると共に電線の性能も十分に考慮する必要があります。電圧表記については各商品仕様をご確認ください。

(※一部の製品は、低圧の部類の中でも弱電用として定格設計は無く、耐電圧や試験電圧を設けている物もあります。)

電圧表記に「600V」や「DC20kV」などと表記されていますが、特段交流・直流の判別がつかない場合には、交流(AC)を指していることがほとんどです。

直流(DC)の場合には耐高電圧が求められることが多いため「DC20kV」などと大きい数値で表記されていることがほとんどです。

電気/電子機器用の電線の選定においては、そこに加わる電圧、電流の大小、直流、交流等の諸条件を勘案して選定する必要があります。





今回は直流と交流の「変換方法」について解説しました。
我々が普段使用している家電や電子機器は、すべて変換された電気で動作していることが判ったかと思います。

オヤイデ電気では電線・資材を提供しています。
この記事は電線に直結する情報はありませんでしたが、例えば修理に必要な電線、製品に配線される電線等々、お客様の電線探しのお手伝いになれば思います。

以上、ウノツでした。

P.S.  毎週月曜日更新のサンデン、1日遅れてすみませんでした。


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秋葉原直営店に是非お越し下さい。

皆様のご来店をスタッフ一同お待ちしております。



営業時間

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