突然ですが「平角線」をご存知ですか?「平角線(ひらかくせん)」と読みます。
一般的に電線は円形の銅線をイメージすると思いますが、平角線は”四角い”のです。
”え? 四角い電線ってなに?”
今日は平角線について解説します。
平角線(ひらかくせん)とは
銅線には大きく分けて、丸線と平角線とがあります。丸線は文字どおり、断面が丸く、平角線は長方形の線です。丸線が「そば」で、平角線が「手打ちの太麺うどん」といったところでしょうか。
主に導体形状が長方形状のマグネットワイヤーが平角線です。コイルを巻こうとするとき、丸線と比べて密に巻くことができ、小型化や効率的な熱放散に優れるため、各種用途で利用されています。
特徴 | 丸線 | 平角線 |
---|---|---|
断面 | 円形 | 長方形 |
占積率 | 平角線に比べて低い | 丸線に比べて高い |
熱放散 | 平角線に比べて劣る | 丸線に比べて優れる |
柔軟性 | 柔軟性がやや劣る | 柔軟性がある |
コイルへの適正 | 比較的巻線しやすい | 小型化、高密度化に適する |
機器の振動吸収 | 振動を吸収しにくい | 振動を吸収する |
メリット | 汎用性が高い、入手しやすい | コイル用途の時、丸線より優れる点が多い |
デメリット | 緊密な設計の時平角線に劣る点がある | 使用が限定的、手に入れにくい |
平角線の主な用途
- トランスフォーマー(変圧器)
表面積が大きく、熱を効率的に放散できるため、大電流が流れるトランスに適しています。また、コイルの占積率を高くし、小型化に貢献します。 - モーター
コイルの小型化と高占積率を実現し、機器の小型化に貢献します。 - バッテリー
幅広平角線は、自動車用エアバッグやバッテリー向けに使用されており、高圧延倍率の幅広平角線も製造されています。 - エレクトロニクス製品の内部配線
薄くて柔軟性があり、屈曲特性が良いことから、家電製品や自動車のエアバッグ、バッテリーなどの内部配線に使用されています。 - 高電力機器の電線
溶接機や電熱加熱炉などの高電力機器の電線、リード線、アース線として使用されます。 - その他
ムービングコイル、プリンタコイル、小型モータ、高級スピーカ、ノイズフィルターなどにも使用されています。
平角線の特徴
- 小型化
丸線に比べて密に巻けるため、コイル全体の体積を小さくすることができます。 - 高占積率
長方形の形状により、より多くの導体をコイル内部に収納できるため、占積率が高まります。 - 効率的な熱放散
表面積が大きいため、熱を効率的に放散させることができます。 - 均一な絶縁特性
コーナー部を含め、均一な絶縁特性が得られます。 - 巻線作業性
コイル表面のフラット化に有利です。 - 軽量化
銅クラッドアルミリボン線、アルミリボン線などの材料を使用することで、さらに軽量化が図れます。 - 高電圧用途
高い絶縁特性を持つため、高電圧駆動用途に適用できます。
メリット
- スペース効率の向上
平角線は丸線よりも密に巻くことができ、コイル全体の体積を小さく抑えることが可能です。そのため、製品の小型化において大きなメリットとなります。また、巻き数を増やすことも容易になるため、性能の向上にも寄与します。 - 優れた熱管理性能
平角線は表面積が大きく、熱を効率よく放散できる特性があります。高電流が流れる用途や熱がこもりやすい設計の場合でも、過熱リスクを軽減できるため、信頼性の高い製品作りが可能です。 - インダクタンスの向上
コイルの形状や巻き方によっては、平角線にすることで磁場効率が改善され、より高いインダクタンスを得られる場合があります。特に高性能な回路設計を必要とする場面では重要なポイントです。 - 機械的強度の強化
平角線は丸線よりも剛性が高く、振動や衝撃に対して強いという特性があります。これにより、自動車や産業機器など、耐久性が求められる分野でも信頼して使用できます。
デメリット
- 製造コストの増加
平角線は製造工程が複雑で、丸線よりもコストがかかる場合があります。量産時の費用対効果をしっかりと見極めることが必要です。 - 巻き取りの難しさ
断面が長方形の平角線は、丸線と比べて巻きにくい傾向があります。自動巻き機を使用する場合も、調整や治具の準備が必要となるため、手間が増える可能性があります。 - 接続作業の困難さ
端子処理やハンダ付けにおいて、平角線は丸線よりも難易度が上がる場合があります。特に接触面の確保や接続の安定性を確保するためには、特殊な技術や工具が必要になることもあります。 - 電気的特性の変化
平角線への変更により、インピーダンスやQ値といった電気的特性が変化し、回路設計に影響を及ぼす可能性があります。設計段階での慎重な検討が求められます。
平角線の選び方
材料の選定
平角線に使用される材料は、銅やアルミニウムが一般的です。
使用環境や求められる特性に応じて、適切な材料を選定します。
例えば銅は高い導電率と耐久性があり、多くの電気機器で使用されています。
また、アルミニウムは軽量でコストパフォーマンスに優れますが、銅に比べて導電率が低いです。
主要メーカーでは概ね銅平角線が主ですが、サイズや絶縁材種類によって材料まで選べることがありますのでお問い合わせください。
断面積(サイズ)の選定
平角線の断面積は、通電させる電流量と熱管理能力を考慮して選定する必要があります。
高電流が流れる場合や、使用環境の温度条件を確認し、適切な断面積を選びます。
下記はノーメックス紙巻き平角線の製造可能サイズ表です。
導体種類・絶縁材種類によって製造可否が異なりますのでお問い合わせ下さい。
※この表は、製造可能代表サイズです。
※この表に未記載のサイズも製造可能。
※特定向け先等の理由により製造不可のサイズもあります。
絶縁材・融着層の選定
裸銅の平角線にノーメックス紙や綿糸、ガラス繊維を緊密に重ね巻した絶縁、ポリウレタンからポリアミドイミドまでの被膜絶縁、更に融着層を重ねた仕様を選定できます。
絶縁材 | 記号 | 耐熱温度 | 備考 |
---|---|---|---|
ノーメックス紙巻 | _XC | 220℃ | 1~4重から選ぶ/重ね具合も指定 |
紙巻 | _KC | 90℃ | 厚さ0.3~0.5mmから選ぶ |
B種二重ガラス巻 | B-DGC | 130℃ | B種、F種、H種から選ぶ |
F種二重ガラス巻 | F-DGC | 155℃ | |
H種二重ガラス巻 | H-DGC | 180℃ | |
ポリウレタン | UEW | 130℃ | |
ホルマール | PVF | 105℃ | |
ポリエステル | PEW | 155℃ | |
半田可能ポリエステル | SFPEW | 155℃ | |
半田可能ポリエステルイミド | SFEIW | 180℃ | |
ポリアミドイミド | AIW | 210℃ |
融着層 | 記号 | 備考 |
---|---|---|
アルコール可溶タイプ | ASB | 工業用アルコールで融着 |
熱風加熱タイプ(140℃) | S14B | 150~170℃に加熱して融着 |
熱風加熱タイプ(170℃) | S17B | 180~200℃に加熱して融着 |
熱硬化タイプ | SMB | 工業用アルコールまたは熱風で接着させた後、二次加熱処理 |
※上記以外にも使用用途に合わせた接着剤をご提供可能です。
平角線コイルへの変更は、スペース効率や熱管理、耐久性といった性能面で大きなメリットがありますが、製造コストや巻き方、接続作業の難しさといったデメリットも伴います。
平角線は、多用途や仕様が限定的であるため当社では在庫にて販売はしておりません。受注製作にて承りますので、サイズ等詳細決まりましたらオヤイデ電気までお気軽にお問い合わせ下さい。
以上、ウノツでした。
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