2021年11月23日火曜日

【ヘッドホン改造】FOSTEX「RPKIT50」を使って、オヤイデ流にカスタムしてみた

FOSTEX CUSTOMがリリースしたヘッドフォン自作セット「RPKIT50」は音が出て完成!っていうわけじゃなく、様々なチューニングパーツがセットになっており、自分好みのチューニングができるところが醍醐味といえます。

FOSTEX 【RPKIT50】
https://www.fostex.jp/20210729/15380/

FOSTEXホームページ引用
RPKIT50は、RP(Regular Phase)技術を採用した独自開発のドライバーユニット「RP 振動板」を搭載したステレオ・ヘッドホンを組み立てることができるキット製品です。チューニング変化一覧表を参考に、複数の音質調整用パーツを取り付け調整することで、音楽鑑賞用や、音楽制作用モニター・ヘッドホン仕様など、好み・用途に合わせた音質作りを楽しむことができます。

*

下記動画内の作り方のコツチューニングパーツ説明が分かりやすいです。まずはこちらをご覧ください!

組み立て式のヘッドホンがFOSTEXから登場!「RPKIT50」の組み立て&ヘッドホンの仕組みを解説

というわけで完成させました!


作ってみた感想
  • 開放・半開放・密閉を作り出せるのは面白かった。自分は半開放が好み。
  • ネジが細かく若干のストレスを感じたので、手先が不器用だと自覚がある人にはお勧めしません。
  • ぶっちゃけ制振材の貼り付けがメイン作業だった。
  • 2種類のイヤーパッドが付属されていて、それぞれリスニング用・モニター用に向いている音質で、用途に応じて使い分けしたいと思った。別売りイヤーパッドも欲しくなった。
  • ケーブル作りをしている身としては、ハンダ付け難易度が低く、とても作りやすかった。

もっと改造してみよう。

FOSTEX RPシリーズは改造されるユーザーも多く、簡単な改造で音が激変することでも有名なようです。※鳴らし方が難しいから改造したくなっちゃう、という声も。

過去の先駆者たち

結構ハードめな改造もあるけど、多くは「ハウジングの制振」に気を使ってるような印象ですね。

今回行う改造はオヤイデ流ということで、ケーブル周りを中心に改造してみようかなと思います!


お品書き
  • 1. ユニットのハンダを変えてみよう。
  • 2. ハウジング内に詰め物をしてみよう。
  • 3. 2.5mm4極リケーブルを試してみよう。
  • 4. 裏技2.5mm4極・L型プラグ対応に改造しよう。
  • 5. 難易度<高>渡り線を交換してみよう。

ユニットのハンダを変えてみよう

ユニットの基盤には(+)(-)それぞれ予備ハンダが乗っており、ハンダづけしやすく用意されています。
ですが「一般的な共晶ハンダ(鉛入り)」を使っていそうなので、オーディオ向け鉛フリーハンダに交換したら音が良くなるのでは?と予想しました!

基板のハンダ除去にはハンダ吸い取り線が便利です。

まずは純正ハンダを取り除くところから。
ハンダ吸い取り線の作業にはコツが要りますので要注意。
基板を傷めないよう、手早く作業を終わらせるようにしましょう。

ハンダは「オヤイデ SS-47」を使用しました。
SS-47にした意図は解像度向上ワイドレンジな傾向を付与し、分解能の高いヘッドフォンを目指しました。

 ≪ 結果 ≫ 
予想通り「解像度の向上」と「ワイドレンジ傾向」な特性が得られました。特に高域の曇りが晴れて、天井が広くなったような感覚も覚えました。
手軽にできるけど効果抜群で、RPKIT50を購入された方は絶対にお勧めしたいです!

オススメ度:★★★★☆

ハウジング内に詰め物をしてみよう

100均で買えるもので挑戦
RPKIT50の作業工程にもある通り、ハウジングの制振を工夫しないと箱鳴りが強い印象を覚えたので、制振対策を施すことにしました。また自分自身がMDR-CD900STに慣れているので、同じような素材をハウジング内に充填して、もう少し近接感のある音に仕上げたかったというのもあります。

というわけでMDR-CD900STを意識して、ハウジング内に「ウール」を詰め込んでみました。本当は綿やシルクの方が良かったのですが、100均で探してみたところ「ウール」が丁度良さそうだったので購入。

 ≪ 結果 ≫ 
ヘッドフォンの重さを増やさず、一気に近接感が出てきました。簡単にできた割には好みの音質に近づけることができたので満足してます!
しかしウールは毛羽立ちが酷く、正直オススメできません。静電気が起きにくい綿・シルクが理想的です。毛羽立ちが少なければ星4ですね。

オススメ度:★★★☆☆
※他に良い素材があればこっそり教えてください。笑

2.5mm4極リケーブルを試してみよう


RPKIT50は2.5mm4極バランス接続に対応しているので、バランス接続仕様で製作を進めました。4芯線もしくは4芯シールド線にも色々種類があるので、お気に入りのケーブルを探してみてください。



インターフェース側はNP3RX-Bにしました。RME BabyfaceにはL型ステレオフォンが使いやすいですね。音質重視の方はP-240Tにすると解像度やレンジ感はもっと改善されます。

 ≪ 結果 ≫ 
色々ケーブルを試した結果、最も結果の良かったHPC-26QUAD+P-2.5/4Gで決まりました。抜群に良いです。ハンダはもちろんSS-47で。
リケーブルすると純正ケーブルで失われている情報が如実に感じられるので驚きます。まあ純正ケーブルは取り回しが良いので”音質はそこまで重要視していない”という意図が汲み取れました。これはこれで。


純正ケーブルとHPC-26QUADを比較した時、
  • 全帯域の音密度が向上
  • ローエンドが綺麗に伸び切って、重心の低い低音が気持ち良い
  • 天井・音場が広く、臨場感のあるサウンドに
ハウジング内の詰め物をして近接感が増しながら、音場の広さも感じられるようになったのは収穫でかいです。定位が見やすくなり、モニター用途には最適なチューニングに近づいています。

純正ケーブルとの音質差分だけで考えれば、リケーブルは絶対にお勧めです!

オススメ度:★★

裏技2.5mm4極・L型プラグ対応に改造しよう

2.5mm4極プラグが一世を風靡していた時期に流行っていた「2.5mm4極をL型にする裏技」、これがRPKIT50の最適解だと思ったので実験!

そのままではカバーが干渉して入らなかったので、ハンディルーターでちょっと削ったら取り付けできました。穴内径を約0.5mm拡げれば取り付け可能です。

完成したケーブルがこちら。モガミ2893を使用しました。取り回しが良く、見た目が純正みたいで満足度高いです。

 ≪ 結果 ≫ 
めちゃくちゃ使いやすくなりました。2893は外径4.8mmと重めのケーブルなのですが、全くストレスがありません。全FOSTEX RPKIT50ユーザーにお勧めします。

一つ注意点としては「2.5mm4極L型の裏技は、ケーブル外径4.0mmまで」を推奨します。プラグ内部にケーブルが収まりきらず、2893は無理やり組み上げた感じになりました。
やはり一番お勧めのケーブルは「HPC-26QUAD」となります。

ですが、2.5mm4極裏技は「AEC 2.5mm4極」を使用しているせいか、P-2.5/4Gとの音質差が如実に感じられたので、音質重視のリケーブルは「HPC-26QUAD + P-2.5/4G」を最終仕様としてフィックスしました。

P-2.5/4G24K金メッキ・非磁性仕様になっています。大手音響プラグメーカーはTIPからハンダ付け部に鉄芯(磁性体)を使っているメーカーが多い中で、オヤイデの2.5mm4極はTIPからハンダ付け部まで真鍮削り出しになっているので信号歪みが少なくなり、原音忠実感を強調します
実は技術力がある製造工場でなければ実現できない貴重な2.5mm4極プラグなのです。



RPKIT50用のリケーブルにおいては「P-2.5/4Gで音質を取るか、裏技L型プラグで取り回しを取るか」、究極の選択になりそうです…!

オススメ度:★★

難易度<高>渡り線を交換してみよう。


RPKIT50はL側からR側に渡り線を通しているので、L/Rの音量・音質に若干の差が感じられました。なので、渡り線を精密導体102SSCの細物2芯リッツ線「HPC-28-2U」に交換しました。

【改造注意!】
専用ドライバーが必要になります。分解は自己責任で作業行ってください。
渡り線を交換する為にはバンドを取り外す必要があり、「トルクスねじ」で固定されています。


分解するとこんな感じ。MDR-CD900STのようにボールベアリングも無いのでトラブルは少ないと思います。ただ組み直す際に複数パーツを手持ちしながらネジを締め直すので、これまた手先が器用な人でないと手間取るかもしれません。

渡り線の通し方は、既存渡り線とHPC-28-2Uを少量のハンダで繋いで、軽い力で反対側まで引っ張ってあげることで簡単に通せます。他ヘッドフォンの渡り線交換と同じですね。

 ≪ 結果 ≫ 
良い感じです!
最初はR側渡り線だけ交換しましたが、ジャック→L側の接続ケーブルが純正のままだったので、逆にL側の音が曇って聞こえます。なのでL側の配線もHPC-28-2Uに交換したら、LRの音質・音質差が知覚できないほどバランスが整いました!もう元には戻れません。

なんということでしょう。
渡り線が改善されたことでこれまた解像度が一気に増しました!

トルクスねじの敷居の高さはあれど、これだけの為に専用ドライバーを購入する価値は・・・個人的にはアリだと思います!笑 RPKIT50を買った方は是非検討してみてください!

オススメ度:★★★☆
※専用ドライバーが必要なので星1つ減点。。。ドライバー持ってる方なら星5!

改造を終えて・・・

2.5mm4極リケーブルを色々試してみよう。>で製作したHPC-26QUADリケーブルが圧倒的に音質抜群で、相性がとても良いと感じました。

純正のままだと低音が希薄で、ハウジングの共振がプラスチックっぽい響きで、振動板が遠くで鳴っているように感じていました。
一通り改造を終えた後のRPKIT50は、
  • 重心がどっしりと低く
  • 低音がファットなのに膨らまず
  • 詰め物のお陰で近接感が出たのに高域のきつさはなく
  • 分解能・定位が改善されてモニターしやすく
シンプルな改造ながら完成度高い音質に仕上がってるのでは?と思います。もし好みに応じてチューニングする余地があるとしたら「ハンダ」で色々お試しされるのが良いと思います。SS-47は高域特性が良いので、もっと高域を落ち着かせたかったら「和光テクニカル SR-4NCu」にしたり、中音域の押し出し感を出したかったら「アルミット KR-19SHRMA -LFM48-」にしたり、お気に入りのハンダを試してみてください!

今回DTM用ヘッドフォンにチューニングを心がけていたのですが、完全に3万円クラスのヘッドフォンを凌駕するクオリティに仕上がったと思います!(ケーブルが高価だから当たり前っちゃ当たり前ですけど)



Youtubeを見て分かる通り、自分好みのチューニングが出来るところが良いですね。自作キットという特性を生かし、むしろ「ユーザーにあれこれやってもらっちゃおう!」という懐の広さが好感触でした。

元々カスタムされることの多かったRPシリーズですが、FOSTEXがカスタムしやすいよう設計されていたので簡単に弄れました。ヘッドフォン1つで色んな音質を楽しめる、まさに”お値段以上”の満足度があったと思います。

改造したRPKIT50は店頭に展示しますので、気になる方は試聴してみてください~!
お客様の中で「俺の改造の方がやべーぞ」っていう方がいらっしゃいましたら、是非お店でお話聞かせてくださいね!

以上、原田でした。


PS.さて、自宅用にもう一台買っちゃおうかな。


【2021/12/3追記】
フォステクスカンパニー技術部 内田様

フォステクスカンパニー技術部の内田様から直々にご連絡頂き、当ブログのRPKIT50 ”Oyaide Cable Mod”を試聴していただきました!

【ヘッドフォン改造について】
低音の出方と近接感の変化はありますね。

【リケーブルについて】
それぞれ個性がありますが「モガミ 2893」がバランス良かったです。
しかも試聴環境である「SONY TA-ZH1ES」との相性が凄く良くて、かなり完成度高いんじゃないでしょうか。

【モガミ2893の音質について】
リファレンス音源:Loudness / Dark Desire
ファーストインパクトが強く、迫力があるというか、音が迫ってくる感じがありました。
モガミ2893を聞くと、純正ケーブルはおとなしい印象を覚えましたが、聞くジャンルによって純正ケーブルの方が良い音楽もあると思います。

またモガミ2893がアンバランス接続なので、これが4.4mm5極バランス接続になれば化ける気がします。

内田様、試聴いただき本当に有難うございました!
タメになる話も沢山聞かせていただき、ヘッドフォン熱が沸々と燃え上がってきています!!!

2 件のコメント:

  1. 少し離れた話題で失礼します。

    このブログに使われているケーブルはUSBケーブルとしての利用は可能でしょうか?
    C to C のOTGを検討しています。

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    1. こちらのケーブルでもUSBケーブルを作ることは可能ですが、USB専用ケーブルではない為、実際に動作するかは加工精度などにも依存します。

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