2017年7月24日月曜日

電線や電材で目にする“◯◯性”って何だ?


突然ですが、こちらの画像をご覧ください。


3C-2Vの販売ページです。「可とう性に優れたポリエチレン~」とあります。



この「可とう性」という用語、各メーカーの商品カタログで多々見かける用語ですが、
皆さんは意味をご存じでしょうか?
実は「可とう性」とは「この電線は簡単に折り曲げられるくらい柔らかい」という意味で使用される用語なのです。
日常生活では馴染みがなく、自分も電線を扱う仕事に就くまで知りませんでした。

さて、続きまして次の画像をご覧ください。

VCT-222の販売ページ。画像にもでかでかと「柔軟性」の文字が。

言わずもがな「柔軟性」とは、やわらかい(柔らかい/軟らかい)の意味です。



一緒じゃねーか!?

と感じた皆さまへ補足説明すると、メーカーの英訳でどちらも「flexibility」が割り当てられていて、
端的に言えばコレ、一緒です。尚、元の言葉の意味は以下の通りです。

【可撓(とう)】 曲げたわめることができること
【柔軟】 やわらかく、しなやかなさま
つまり、曲げて使う電線に対して「可とう」は適切な表現ですが、
「柔軟」はもっと広い意味での柔らかさなのでこれも正しい表現となります。





さて、この「○○性に優れます」という言葉は電線や電材の商品説明で度々登場します。

「難燃性」「耐熱性」「耐寒性」「耐油性」「耐放射線性」なんて読んで字の如くなものから、

「非移行性」「耐アーク性」 なんていう素人が分からないもの

さらには「電気特性」「耐環境性」という、具体的に何を指すのか分かりにくいものまで様々です。

そこで今回のサンデンでは、拾える限りの○○性を解説・分類してみたいと思います。



では数社のカタログ等から、「○○性」いう言葉を抜き出してみましょう。


順不同。数社掘り漁っただけでも企画立案を後悔するレベル。

同じ意味を異なる名称で呼んでいるケースもありますが、わんさか出てきます。


各メーカーのカタログを見ると英訳が併記されているものも多いのですが、

○○ resistance   (例:flame resistance、難燃性)
~bility        (例:extensibility、伸縮性)
〇〇 characteristic (例:Movement characteristic、移動特性)

など統一感がなく、○○性というまとめ方は日本語表現ゆえに繁殖してしまったと考えられます。(まぁ便利ですし。)
しかしこうやって英訳を軸に考えてみると、大まかに以下の特徴に分けられます。
※あくまでも筆者の個人的な見解です。


① さまざまなストレスへの耐性
    耐熱性、耐油性、耐摩擦性 など

② 特徴を表すもの
    伸縮性、柔軟性、非粘着性 など

③ 特性(characteristic)を表すもの
    電気特性、移動特性、機械特性 など

④ その他
    作業性や配線性といった言葉は、その商品の特徴や特性を指すのではなく、
    「~の理由で作業性(配線性)が良い。」という使われ方なので別物ですね。



製品やそれに用いられる材質が受けるストレス(=○○に入る言葉)に対する耐性ですね。このストレスにより性能の劣化や製品の破損が生じないよう、いずれも「耐○○試験」などを経て、優れている/優れていない が判断されています。実際のところ①が最も多い「○○性」かもしれません。

ちなみに似て非なるもので耐熱性難燃性があります。
これは絶縁体やシースが「熱に強い」のか「燃えにくい」のかの違いであり、
「熱には強いけど燃えやすい」ものもあれば「熱にはそこまで強くないけど燃えにくい」ものもあります。古河電工の下図が分かりやすいですね。
古河電工カタログより抜粋





は分かりやすい(検査や試験をしなくても分かるような)その製品の特徴ですが、物によって試験をして数値が公称されているものもあります。

はいわゆるカテゴリーですね。
メーカーによっても異なりますが、以下のようなものです。
「電気特性」・・・許容電流、導体抵抗、絶縁抵抗、静電容量 など
「移動特性」・・・屈曲性、捻回性、U字曲げ、耐震性 など
「機械特性」・・・引張強さ、伸び率、耐カットスルー性、耐摩耗性 など




以下、分かりにくい「○○性」をいくつかピックアップしてご紹介します。

●耐アーク性
アーク放電(大電流低電圧放電)による材質の劣化に対する耐性。

●離型性
粘着性の物質と接触しても容易に離型することができる性質。主にテープのカタログなどで登場します。

●耐候性
製品が屋外で使用されたとき、紫外線や雨、気温変化などによる劣化や変形、変色に強いかどうかを表します。厳密には耐オゾン性や耐水性(吸水率)などに細分化されます。

●耐カットスルー性
配線材の機械特性への評価方法として、刃の付いた荷重を電線に押し付け、荷重が絶縁体を破り導体と触れるまでの時間を測定する「耐カットスルー試験」があります。異なる温度/荷重で試験を行い、配線材の強度を評価します。

●耐捻回性
FAケーブル(ロボットケーブル)などに求められる、捻る動きに対しての耐性です。

●非移行性
ワイヤ・ケーブルの絶縁体やジャケットが他の樹脂と接触すると、相手の樹脂を溶か したり跡をつれることがあります。これは絶縁体やジャケットに含まれる可塑剤が相 手の樹脂に移行するのが原因で、移行性 (migration) と呼ばれています。 塩化ビニル・コンパウンドにもっとも敏感なのはポリスチレンで、スチロールや ABS 樹脂と接触する可能性がある場合は注意が必要です。このような場合は、非移行性 (nonmigrating) の材料を使用するか、ワイヤ・ケーブルをポリエチレンの袋に 入れて、相手の樹脂を保護する等の対策を行います。
mogamiホームページ「電子機器用ワイヤ・ケーブル概論」より引用)

●低温性(低温特性)
-45℃で3時間冷却し、3回巻つけた後、巻き戻して1000Vに1分耐えること。
古河電工「電子・電気機器用電線要覧」より引用)。

●耐コールドフロー性
連続して一定の荷重をかけられた物質が、時間と共に形状が変形してしまう現象をコールドフロー(またはクリープ)と呼びます。



正直これはキリがない。。。

後日、細々と追記するかもしれないという含みを残して、ここらで打ち切りと致します。
齋藤先生の次回作にご期待ください。(完)



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 齋藤新でした。







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