2023年5月11日木曜日

【旭化成に聞いてみた】パルシャット®ってなんだ?

【旭化成に聞いてみた】パルシャット®ってなんだ?

2022年11月に発売された「NRF-005T」は、非磁性体でありながらノイズを抑制できるという全く新しい性質がオーディオマニアたちに受け、今も高い評価を獲得しています。

ここ数ヶ月はオヤイデ電気内でも空前のノイズ抑制ブームが起きており、話題が絶えることなく問い合わせも引っ切り無しでした。しかし、技術的にテクニカルな側面も存在するため、誤った認識や誤解を招く情報も散見されました。

そこで、旭化成株式会社スパンボンド事業部の「上林幸平」様をお招きして、直接パルシャット®について聞いてみました!

【旭化成株式会社 スパンボンド事業部 上林幸平 様】

オヤイデ電気にパルシャット®をご紹介くださった張本人。
NRF-005Tの大きな反響を受け、旭化成社内でもかなり手応えを感じていただいたとのこと。これを機に「オーディオユーザーにもパルシャット®の性質を深く理解してもらいたい」との相談を受け、今回インタビュー形式でご説明いただきました。

「パルシャット®」とは?

NRF-005Tに使用している"パルシャット®"とは何ですか?
旭化成㈱が開発した非磁性体ノイズ抑制シートです。不織布を基材とする事で、従来の磁性シートとは全く異なる特性を持った革新的な材料です。
非磁性体ノイズ抑制シート、、、それにはどんなメリットがあるのでしょうか?

従来の磁性シートは固く・重く・柔軟性に欠ける素材でしたが、パルシャット®は軽く・薄く・柔軟性を持つという特性を有しています。

また電磁波ノイズ吸収性能としては、特にGHz帯(高周波数帯)を幅広く吸収するという性能を有しており、主に産業用電子機器や一般電子機器に搭載されていますが、オーディオに対してもSN比改善などの効果がある事が分かってきています。

パルシャット®の構造

"パルシャット®"はどのような構造になっているのですか?

パルシャット構造1
パルシャットの断面を表した図

パルシャット®は三層構造の不織布を基材とし、基材の表面に特殊な金属加工を施しています。金属加工を施す事で表面に導電性が生じてしまうため、絶縁を取るための保護層としてフィルムを貼り合わせています。

「プレシゼ®」と書かれた部分が三層構造の不織布になっているのですね。

・・・「プレシゼ®」って初耳ですが、これは何ですか?


パルシャット構造2
プレシゼ断面の拡大

プレシゼ®とは、旭化成が開発した高機能不織布です。

パルシャット®で採用している三層構造の不織布は、極細繊維層を一般的な繊維径の層でサンドイッチした作りになっており、更にこの三層構造に旭化成独自の特殊加工を施す事で、パルシャット®の基材に適した素材として完成させています。耐熱性や安定性に優れるポリエステルでこの構造を作る技術は、世界で唯一旭化成だけが有しています。

凄い!高機能不織布ありきのパルシャット®、ということなのですね。

そうなんです。実はこの高機能不織布の技術が重要なのです。

では普通の不織布ではダメなんでしょうか?

【重要】

まず、技術面で言えば一般的な不織布に同じ金属加工を施しても電磁波吸収性能は発揮しませんし、不織布単体でも電磁波は吸収できません。

弊社が世界で唯一有する不織布製造技術と、最適化された加工技術によって広帯域な電磁波吸収性能が生じている訳です。

抵抗が高すぎればそもそも表面の金属層でノイズをキャッチできませんし、抵抗が低すぎればただの導電布になってしまいます。その絶妙な塩梅が弊社の不織布製造技術の為せる技なのです。

「パルシャット®用に最適化されたプレシゼ®を設計している」からこそ、この優れた電磁波吸収性能が生まれるということなのですね。これは技術とノウハウが無いと成し得ない製品ですね。

パルシャット®の性能

では、改めて「なぜノイズを吸収できるのか」を教えていただけますか?


パルシャットのメカニズム
電子顕微鏡で拡大した図と、ノイズ吸収概念図

不織布表面に加工された金属層がノイズをキャッチし、不織布と金属層が相互的に作用して生み出した抵抗がノイズの電気エネルギーを熱エネルギーに変換する事で、ノイズのエネルギーを損失させるというメカニズムで電磁波を吸収しています。

不織布と金属層のバランスが重要で、ノイズ吸収する為に最適なプレシゼ®(三層構造の不織布)を設計しているわけですね。

はい。構造そのものがノイズを吸収する為に最適化されています。

その性能は測定結果にも表れているようですが、そちらをご説明いただけますか?



パルシャット®は高周波数帯を広帯域に吸収する性能を持ちますが、特に2GHz以上の周波数帯では伝送ノイズを30-40dB程度吸収する特性を持っています。(±0dBが何も吸収していない状態)



(左)Harmonic Distortion Levelは0~20kHzの可聴帯域内におけるTHDレベルを表したグラフ。
(右)ピンクノイズの測定結果では殆ど変化無し。

音響向けの測定結果もあります。

パルシャット®の保護層をPPフィルムに変えた製品「パルシャットMU」を使用したテストでは、~20kHzのノイズレベルを広帯域に抑制する事でS/N比を改善出来たというデータが取れています。一方で、音圧バランスに影響するピンクノイズには影響を及ぼさないという事が確認できています。

ピンクノイズレベルに影響が出てないのは凄いです。これが原音となる波形に殆ど影響を及ぼさないとする所以なのですね。

最後に

パルシャット®のオーディオに対する優れた効果は理解していましたが、NRF-005Tは予想以上の反響でした。

オーディオユーザーから届いた反響を見て如何でしたか?

オーディオ用途では「知る人ぞ知る」製品でしたが、想像以上の反響を受け担当者として非常に嬉しく思っております。皆様により良いオーディオ体験をお届けできるよう、原料メーカーとして幅広いご用途での検討を推進致します。

最後にパルシャット®をご愛顧いただいているオーディオユーザーに向けてメッセージをお願いします。

パルシャット®がオーディオに与える効果については、メーカーの我々にも未知の領域が多くございます。オーディオファイルの皆様には、是非この新雪の原野を探索しご自身にとって最も心地よい音を探して頂ければと思います。

今回は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。



🎊先行告知🎊


2023年6月24日(土)25日(日)に開催される【OTOTEN2023】
オヤイデ電気は今年も出展決定いたしました!

当日は「旭化成㈱ 上林様」をお招きしてPULSHUT®使いこなしセミナーを開催します。

【プログラム】
  • パルシャット®のメカニズム
  • 何故音質に作用するのか?
  • どのように使えば狙った効果を得られるのか?
試聴を交えながら、NRF-005Tの実践方法をご紹介していきますよ。

詳しい情報は追って告知いたします。乞うご期待!



【パルシャット®採用製品一覧】


NRF-005T
NRF-005T
https://shop.oyaide.com/products-nrf-005t.html

NRF-005L(A4シート・粘着面付き)
https://shop.oyaide.com/products-nrf-005l.html


↓↓過去ブログも要チェック!↓↓
電磁波吸収材バトル、勃発!【NRF-005T】VS【MWA-010T】どっちが優れてる?
電磁波吸収材バトル、勃発!【NRF-005T】VS【MWA-010T】どっちが優れてる?
http://oyaideshop.blogspot.com/2022/10/nrf-005tvsmwa-010t.html

NRF-005Tのよくある質問コーナー
NRF-005Tのよくある質問コーナー
http://oyaideshop.blogspot.com/2022/11/nrf-005t20221116.html

以上、原田でした。

※ PULSHUT®、パルシャット®は旭化成株式会社の登録商標です。
※ Precisé®、プレシゼ®は旭化成(株)の登録商標です。
※ 旭化成承認番号:F03E067

0 件のコメント:

コメントを投稿