こんにちは。
先週に引き続き鈴木です。
前回は「サンデン」で担当させていただいた記事の中で、生活家電についているアース端子の役割についてお話ししました。
「まだ読んでないよ~」という方は、ぜひこちらから先にチェックしてみてくださいね。
さて、前回のおさらいからいきましょう。
一般的にアース端子、つまり**保護接地(保安用接地)**は、万が一の感電を防ぐためにあります。特にキッチンや洗面所といった“水回り”で使う家電製品に多いんですよね。
ところが、部屋をぐるっと見渡してみると――水回りとはまったく関係なさそうな場所にもアース端子を見かけることがあります。
例えば…AV家電やオーディオ機器のコンセントプラグ。意外とそこにもアース端子やアース線がついていたりします。オヤイデ電気が誇るオーディオ用電源ケーブルにも、しっかりアース端子がついているんです。
では、水回りから遠く離れたオーディオ機器にあるこのアース端子、いったい何のために存在しているのでしょうか?
前提としてお伝えしておきたいのは、アース端子は水回りから離れた場所にあったとしても、感電防止が最も大切な役割だということです。電気を使う以上、漏電や過電圧がまったく起こらないとは言い切れませんからね。
ただし、接地(アース)を行うことで得られるのは感電防止だけではありません
実は、その目的に応じていくつか種類があり、それぞれ異なる効果を狙っているんです。
その中のひとつが、今回取り上げる 「機能接地」。
一言でまとめると、これは 「機器自体の動作を安定させるため」 の接地です。
では、この“機能接地”って具体的にどんなことをしているのでしょうか・・・?
機能接地の役割
接地に使われている「地面」、つまり大地は、私たちの地球上で最も大きな物体です。
機能接地とは、この大きな物体を使って、
・回路を動かす上でのゼロ電位の基準として利用する
・機器内の回路から放たれる電磁波により帯電してしまったエネルギーを逃がし、想定外の誤動作を防ぐ
といったことを行い、機器自体の動作を安定させるために使われています。
では、なぜ「大きな物体」をゼロ電位の基準にすると良いのでしょうか?
ポイントはシンプルです。大きな物体ほど、多少の外的要因があっても影響を受けにくいのです。
つまり、基準がぶれずにしっかりしていれば、その基準をもとに設計された機器は、設計通りに安定して動作するというわけです。
例えば、「立ち幅跳びをする」という動作をする回路を作るとしましょう。
足元がどっしりとした大きな大地なら、設計どおりに安定して跳ぶことができます。
でも、もし足元が柔らかく不安定なマットだったら…?
跳ぶたびに結果が変わってしまうかもしれません。
回路も同じで、基準がしっかりしていることは、安定した動作を目指すうえでとても大切なのです。
ちなみに、機能接地と保護接地は、仕組み自体はほとんど同じです。アース棒を地面に刺して電線をつなぎ、コンセントを通して家電製品と地面をつなぐイメージですね。
つまり、保護接地のアース端子は、機能接地の役割も兼ねているということです。※逆もまたしかり
コンセントへの機能接地は必ず必要?
ここまでの話を聞くと、「じゃあ機能接地も必ず接続しなきゃいけないの?」と思われるかもしれません。
でも実は、機能接地は法的に義務付けられているわけではありません。
保護接地のアース端子と同じように、アース線を接続しなくても電化製品自体は動きます。
※水回りの"保護接地"は2016年より内線規程改定に伴い義務付けられています!
部屋のコンセントがアース対応していないために、オーディオ機器などのアース端子がそのまま浮いている…なんて方も多いのではないでしょうか。
「アースにつないでなくて大丈夫?」っと心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこれ、義務付けられていない理由があります。
その理由とは、機能接地はコンセントに頼らずとも機器内部で完結している場合がほとんどだからです。
細かい部分は機器設計によりますが、日本国内で販売されている多くの機器では、外装などを代用して(フレームグランド)、大地アースに繋がなくても問題なく動作するように作られています。
※もちろん、メーカーが推奨している場合は大地アースに接続してください。
考えてみれば、もし機械が「大地アースを使わないと正常に動作しない」となると、スマホのようなポータブル機器は動作が不安定になってしまいますよね。
そういうわけで、大地への機能接地は必ずしも必要ではないのです。
とはいえ、大地への機能接地を追加で施すことで、予想外の恩恵が得られることもあります。
オーディオ機器における機能接地の効果
オーディオ機器におけるアースの効果や考え方は非常に複雑で、ユーザーごと、メーカーごとに見解が異なります。そのため、一概に「これが正解、これが間違い」と指摘することはできません。
とはいえ、多くのオーディオ機器でアースの効果として最もよく挙げられるのは、**「ノイズを減らしてS/N比を向上させること」**です。
もちろん、機能接地の根本的な目的は**「機器自体の動作を安定させること」**であり、機能接地が直接ノイズを吸い取っているわけではありません。
しかし、仮に「回路内の帯電や不安定な基準が原因でノイズが発生している」とすると、大地アースに接続することで回路の動作が安定し、結果としてノイズが減る可能性があります。
さらに、複数の機器を同じ大地アースに接続することで、機器間の電位差をなくすこともノイズ対策になります。
電位差があると、高い方から低い方へ電流が流れ、この電流が思わぬノイズの原因になることがあるからです。
メーカーは通常、「大地アースなしで動作する」ことを前提に製品を設計しています。
つまり、大地アースを追加することで、メーカーの想定以上の性能を引き出せる可能性もあるのです。
こうしたさまざまな可能性を考えると、アースの世界はなかなか奥が深く、ワクワクしますよね…!
保護接地と機能接地、混ぜると危険、かも・・・?
時々いただくお問い合わせに、こんな内容があります。
「ノイズ対策でオーディオ機器のアースを取りたいのですが、エアコンや台所のアース端子から引っ張ってきても大丈夫ですか?」
正解は一概にはありませんが、個人的には「あまり推奨できない」というのが正直なところです。
なぜかというと、多くの場合、こうしたアース端子は建築時に保護接地用として設置されたものだからです。
もちろん保護接地用のアース端子は機能接地も兼ねているので、接続すればノイズが減って快適に…というケースもあります。
しかし、一方で逆効果になる場合もあるのです。
よくある例としては、
・長いアース線がアンテナのように働き、かえって周囲のノイズを拾ってしまう
・ブレーカーを共有している他の家電製品から、ノイズが逆流してくる
といったパターンがあります。
もちろん、これらが必ず起こるわけではなく、環境次第で結果は大きく変わります。
そのため、下手に既存のアースに接続するくらいなら、むしろ浮かせておいた方が良いという意見もあるほどです。
つまり、もし「ノイズ対策」を最優先に考えるなら、既存の保護接地用アース端子は使わず、独立した機能接地専用の接地工事を検討するのもひとつの方法です。
とはいえ、「正しいアースを施工したら音が変わった!」というケースもあれば、逆に「ほとんど変わらなかった…」「むしろ好みの音から遠のいた…」という場合もあります。
結局のところ、やってみないと結果がわからないのも、オーディオの奥深くて面白いところですね…!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、アースのもうひとつの役割についてお話しさせていただきました。
・アースには感電防止以外に、機器自体の動作を安定させるという役割もある
・「ノイズ対策」を目的に、保護接地用のアースにつなぐと、必ずしも良いことばかりではない場合もある
かなりざっくりとした内容になってしまったので、ツッコミどころも多いかもしれません。
例えば、「アースとGNDは意味が違う!」「ピンが増える分、少なくとも制振性は上がる!」など、さまざまなご意見があるかと思います。
このあたりも、いずれ詳しく突っ込んでご紹介したいところ…(もはやサンデンの範囲かどうかはさておき…笑)
何はともあれ、オーディオに限らず「これはどうなの?」という疑問やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。皆さんと一緒に、いろいろな可能性を考えていければと思います。
正解がないかもしれないからこそ追及するのが楽しい・・・
色々あって先週に引き続いた鈴木でした。
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