2023年12月27日水曜日

TUNAMI NIGO GPX-W ~開発裏話~

2024年新春初売りセールで登場する2P-3P電源ケーブル「TUNAMI NIGO GPX-W」が完成するまでには様々なストーリーや苦慮・試行錯誤を経て完成しました。
このブログではお店・通販スタッフと一緒に作り上げた弊社オーディオ製品開発担当から、現代のオーディオアクセサリー事情も交えて開発裏話を語っていただきました。


TUNAMI NIGO GPX-W(1.8m) ¥24,000(税込)
【商品ページはこちらから】

日本のオーディオ機器メーカーの付属電源コードには、一般的にモールド加工された2Pの電源コードが付属していることが多いのはご存知の事だと思います。これはグランドループを防いで音質劣化を防ぐためとメーカー側から説明されるのですが、海外では法律上3Pアース接続が必須の国が殆どなので、海外のオーディオ機器メーカーにおいて、この言説はありません。これまでも日本の家庭では2Pの電源コンセントが大部分だったので致し方無いことだったのかもしれませんが、現状でもそれはほぼ変わらず、未だに2P<PS>E認証を受けた電源コードが付属しているオーディオ機器が多くあります。

弊社の試聴用オーディオシステムはスピーカーを除いて海外メーカーのものを使用しています。よって普段は3Pの電源コードを使用していますが、グランドループの問題は特に感じる事は無くとも、この点は長年気になる話でした。

今回、オヤイデ電気究極の2P仕様の電源コードの企画は、2021年に販売された弊社2P電源コードのAXIS-SOS用に”2極電源プラグと電源コネクターをそれぞれ2極仕様で<PS>Eを別途取得したのを有効活用して、弊社の2芯のTUNAMI NIGO V2 (<PS>E認証済)と組み合わせたらどんな音がするかに興味を持ったのが今回の企画の始まりでした。当初は電源プラグの材質やメッキ方法を店舗・通販スタッフと共に選んで、最良のコンビネーションの2P電源コードを提供することが目的の簡単な企画と考えていました。

ところがいざ色々試してみると、普段使用しているアース接続付きの3Pの電源コードと違って、2芯電源コードならでは音質傾向がある事に気付きました。TUNAMI NIGO V2は、弊社のロングセラーのTUNAMI V2と全く同じ材質と構造で、違いは3芯が2芯だけになったケーブルなのですが、不思議と音質傾向は異なるものでした。

そこで他社の色々なオーディオ用2P電源コードに対するお客様の声をリサーチしたところ、音質傾向的に大別すると「中低域しか出ない」とか、「中高域しか出ない」という不満が度々あることに気付きました。このような声は、一万円台のモールドタイプの2P電源コードにかけられるコストでのケーブル構造や各パーツの素材選びから推測すると、ケーブル屋としては納得できる話でした。

またメーカー付属の2P電源コードから良かれと思ってより高価なオーディオ用の3P電源コードに変えると音のバランスがあまりに変わってしまって慌てて元に戻すといった話もよく見かけました。これも機器メーカーは開発時に付属の2P電源コードを使用して機器をチューニングされている点や、オーディオはどこでバランスを取るかは環境によりそれぞれなので、分からない話ではないと思います。

これらの点を考慮し、ケーブル屋が本気で作ったオーディオ用の2P電源コードのコンセプトの方向性を今一度考え直してみました。

一つは日本のオーディオ機器メーカーが訴えるグランドループの話よりも、一般的な2極の電源コードが与える音のキャラクターのほうが結果的に再生する音への影響が大きいと考えました。

オーディオ用2P電源コードの一番の売れ筋の価格帯は15,000円前後ですが、この辺りの価格帯の殆どの電源ケーブルは2.0sq.程度のOFC導体の物で、金メッキされた真鍮製の端子を持つモールド加工の電源プラグが付いています。また一方で音質に影響を与える絶縁体や外装シースの素材には取り回しのために、柔らかいPVCを素材に使っているケーブルが多いです。

これらはオーディオ用の電源ケーブルとしては比較的に細めの導体を持つ物なのですが、絶縁体の材質により音にダンピングが効かないために低域が膨らんでしまいます。一聴すると低域が出ているように感じられるのですが、実際は低域がぼやけて重心が高くなったことで聞こえ易くなっているだけで、太い導体のケーブルが与えるような深い低域は出ていません。どちらかというと重心の高いぼやけた中低域ばかりが目立ってしまい、ボーカルの中域レンジとぶつかる傾向があるように聞こえます。また高域のレンジは若干狭い印象を与える電源ケーブルが多いように思います。

またこれよりも高い価格帯の2P電源コードになると、導体は3.5sq程度のオーディオ用電源コードとしては標準的な太さになり、素材もOFCから一部高純度銅を使った物などにスペックが上がるのですが、絶縁体や外装シースがPVCなのとモールド電源プラグの端子が金メッキなのは変わりません。

オーディオの世界では、電源ケーブルの導体の太さが低域の再生レンジの拡大に比例する傾向があると考えるのが一般的です。とはいえこれら価格帯の3芯の電源コードとなると、導体の太さや慎重に選ばれた絶縁被膜や外装シース素材が与える重心の下がった低域と共に、プラグ端子の素材やメッキ素材の選択による抜けの良い高域レンジの再生を期待してしまいます。しかしながら2芯の電源コードでは同じ導体サイズの場合、太さの割には3芯の物ほど深い低域が感じられないので、どちらかというと中高域の部分は綺麗なのに低域が若干弱く感じられる傾向を持つ電源コードとしてのレヴューが良く見受けられます。

実は今回のTUNAMI NIGO V22P電源コード用に色々なメッキをかけた2極の電源プラグとコネクターを付けてスタッフと試聴した際に、結果的にベースとして使えるメッキは1種類しかありませんでした。その後に弊社販売サイトのTUNAMI NIGO V2のレヴューをみて愕然としました。電源ケーブルとして使用した際には5.5sq導体の太さからくる低域ではなく、ダンピングが効いて中高域が綺麗なスッキリとした音が特徴の電源ケーブルとしての投稿が多くあったのです。

これは実際に試聴してみることで非常に納得できるのですが、とはいえオーディオマニアなら誰しも太い電源ケーブルにまず期待する所は沈み込んだ低域なので、今回組み合わせる電源プラグとコネクターのメッキ素材は他のメッキ素材では感じられなかった低域を再現できるベリリウム素材の端子部に銀下金メッキの物をベースとして選びました。

オヤイデ電気は海外の多数の有名高級オーディオケーブルメーカーに、弊社標準品からカスタム品まで多種多様な電源プラグを供給しています。今回はそこで得たノウハウの一部をこの2P電源プラグと2極コネクターに採用して位相特性の良さを向上させています。

その他にもケーブルのシールドをアース端子に落とせない構造の2P電源プラグのため、ノイズ対策として近年話題の弊社の非磁性体ノイズ抑制テープ”NRF-005T”と電磁波吸収テープ”MWA-010T”とを合わせて使用し、音抜けの良さの向上と静寂性の実現に一層寄与しています。


【音質傾向について】

このような経過を経て、2P電源コードとしては重心の低い低域が再現でき、中域の位相感も良好となりました。更に高域のレンジにおいても標準的なニッケルや金メッキの電源プラグよりも音抜けを良くしています。とはいえ銀下ロジウムメッキやロジウムメッキのプラグを採用した商品ほど聴感上極端には変わりません。若干低いところの中高域に少しピークが感じられるので、程よく抜けの良い音が特徴の電源コードとなりました。小音量時も聴きとり易く、また音量を上げても比較的耳に痛くない様に音質バランスを微調整しています。

賃貸のマンション等で、2極のコンセントが付いていて交換が契約上不可能なのは良くある話ですが、どんな環境下でも音楽を今以上に楽しめるような最高の電源環境を提供できるように最大限のスペックを今回の商品に投入しました。

近年のオヤイデ電気の新製品はフラットバランスに寄ったソースに忠実な再現を目指した製品が多いのですが、今回のTUNAMI NIGO GPX-Wは最新のチューニングを使いつつも、基本は懐かしい昭和の匂いを感じさせる程良い音のバランスを提供します。

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最後にオーディオ電源コードを初めて検討される方に事前にお知らせがあります。今回の2P電源コードは非常に固く取り回しが悪いためオーディオ機器に使用する際は機器の背面に十分なスペースが必要です。またコンセントによっては、2Pの電源プラグを保持出来ずにプラグが垂れる可能性が多分にあります。今回はその点も含めて比較試聴しています。性能的に特に問題ありませんので、そのままの状態での御使用をお願い致します。

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