BLACK MAMBA-Σ V2がこの楽曲を全体の音のうねりとして聴かせるのに対して、VONDITA-Xは各楽器の存在をはっきりと主張させる聴かせ方のためBLACK MAMBA-Σ V2よりもホールの前方で聴く音のイメージだ。結果としてVONDITA-X で聴く「第1幕 前奏曲」はBLACK MAMBA-Σ V2の悲劇性に対して愛の喜びが勝っているように感じられる。
おそらくバーンスタインもこのイングリッシュホルンの演奏はことのほか気に入っていたに違いないと思わせる素晴らしい演奏であり再現。
BLACK MAMBA-Σ V2で聴かれるイゾルデは端正な歌声。王妃としての貴高く凛とした佇まいを死の間際まで持ち続けた姿に胸を打たれる。VONDITA-Xに変えると「Mild und leise wie er lächeit(おだやかに静かに彼がほほえんで)」と静かに始まる歌い出しからして声の伸びやかさが違う。その声は生気にあふれ、運命に翻弄され死を選ばざるを得なかったというより、むしろ愛ゆえに積極的に死を選んだ一人の女性の姿が浮かび上がる。ケーブルひとつでこれほどまでに音楽が変わるのかと今さらながらに驚く。
まるで舞台上にライトを浴びてたたずむイゾルデ役のヒルデガント・ベーレンスが歌いだす時の頬のふくらみやその濡れた唇が、目の前に見えるようだ。
またボーカルエコーがきれいに整ってくるのでボーカルや各楽器の定位が定まり声の位置がAXIS-303GXよりも下がって、横への音の広がりよりも奥行き方向への立体的な音像感をより強く感じさせる再現。
このディスクが本来もっている品位の高さも感じさせ、豊かな音の響きの再生となった。
これまでのオヤイデ電気の電源ケーブル、特にTUNAMI V2やBLACK MAMBA V2を使った製品は音のエネルギー感を打ち出したものであったが、このVONDITA-Xはエネルギー感よりも中域の周波数帯域を厚めにしてボーカルを生き生きと美しく、品位を感じさせる製品に仕上げている。だから「トリスタンとイゾルデ」のような40年前の録音にも新たな息吹を与えたのだ。
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